まず、積分で面積を求める原理をもう一度確認すると、被積分関数の部分部分の変化量を寄せ集めて全部累積する(積分する)ことで、その関数がグラフ上に作る塗り絵の面積をそのまま計算できる、というものでした。
体積の計算の場合は、この被積分関数の個々の変化量を、頭の中で立体をスライスした薄い厚みを持った面積の大きさと見なし、その累積変化量を寄せ集める(積分する)ことで全体の体積が形成される、と考えるのです。ちょうど、それ自体は2次元に近い薄切りハムや、書物の一枚一枚のページをもう一度寄せ集めて、3次元の元のハムの塊や本の形に戻すような具合です。
つまり、面積計算のときは、グラフが座標平面上に作る図形を、即物的にそのまま計算していましたが、体積の際は、一段抽象化が進んで、本来のグラフの機能らしく、関数の変化量は、純粋な数値を操作していることになります。
3次元の体積の容量を、座標平面という2次元の道具で扱うために、一つづつ次元を落して、個々の変化量というグラフの1次元の高さは2次元の面積値を示すと考え、それが掃き通ったグラフ上の2次元の累計の面積は、3次元の体積を表す、とそれぞれ読み替えているわけです。
あるいは、次のような切り口の説明もできます。面積計算の大まかな概要を説明するときに、そろり新左衛門氏が小判を蔵に集めるという例えを用いました。
先に扱った際は、この小判の、横に平たく敷きつめた広がりだけを計算しましたが、考えてみると、小判にはわずかとはいえ厚みがあり、だからこそそれが掻き集めて収納する際には、「蔵」なり「金庫」なりの、3次元の体積の容量を持った容れ物が必要になります。そこで上の模擬のグラフで、一枚一枚の小判を薄い厚みをもったものと考え、それを寄せ集めたら新左衛門氏はどれだけの蔵を用意しなければならないか、と考えれば、上の話は、そのまま体積計算にも適用できることになります。
また、さらに別の例を用いるなら、積分の面積計算と体積計算の違いは、平面の紙に印刷する2次元のインクジェットプリンターと、最近登場した3次元の3Dプリンターの違い、と考えてもよいでしょう。
2次元のインクジェットプリンタでは、刺繍のように線を往復して図面を描いていきますが、3Dプリンタは、溶剤を薄く焼きつけることで、面を積み重ねながら指定の立体を成形していきます。1次元を積分して2次元に、2次元を積分して3次元に、という違いとちょうど対応しています。
それでは、以上の考え方を踏まえて、簡単な例で、実際に積分で体積を計算してみましょう。