区分求積法の説明では、積分(原始関数)は微分の逆であることを、あらかじめ手持ちの知識としたうえで、もっとも簡単な関数において、区分求積を緻密にしていくことで実際にそうなっていくことを、もっぱらグラフ上の見映えから視覚的に確認してきました。
ですが、積分以前の原型としての区分求積しかなかった段階では、このことはまだ知られておらず、まして一般的に妥当な、確認された事実としていろいろなケースで自由に使用できるわけでもありませんでした。
この認識にはじめてたどりつき、一見まったく関係のなさそうな、微分(速度の分析のような関数の変化の研究)と区分求積(面積を求めるためのシグマ+リミットの計算の掛け合わせ)が互いに関係した表裏一体の存在であることを、数学上の計算としても示したのが、ニュートン・ライプニッツの二人(ニュートンは主に微分の側から、ライプニッツは主に区分求積の側から)です。このため、この二人が、微分・積分の創始者とされているのです。
これによって、微分と積分が体系的な知識として統合され、数学の中のひとまとまりの研究分野、「微積分学(解析学・calculus)」として確立しました。また計算の技術としても、個々の事例において、区分求積をいちいち組み上げて計算するのは、たいへん面倒で困難ですが、微分の逆を行うというまったく別の抜け道が開拓されたことで、作業も劇的に簡略化し、楽になりました。
このように、この発見は「微分積分」全体の土台になる重要なものであるため、「微積分学の基本定理(Fundamental theorem of calculus)」と呼ばれています。
ここまで述べてきた、
- 微分と積分は互いに逆の計算である
- 微分の導関数を元の関数に復元することで、導関数が作る面積を計算できる
- 導関数の累積変化量は、元の関数=原始関数の計算値と一致する
「微積分の基本定理」をイメージしてみよう
厳密なものではありませんが、この基本定理の証明を概略の形でイメージしてみましょう(多くの参考書にのっているものです)今、関数 f(x) の累積変化量=面積を表す関数を S(x) とします。この関数について、Δx 分の差分が作る面積を調べると、それは、小さい側の S(x) の箇所で同じ巾を掛けた長方形と、大きい側 S(x+Δx) で作った長方形の面積の間の値をとります(上図)。
この不等式を Δx で割り、
差分 Δx を小さくつづめていって極限をとると、はさみ打ちの定理により、
となります。これは微分の定義式そのものですので、 f(x) の累積変化量=面積が作る関数(面積関数)を微分すると、もとの f(x) に戻ることを示しています。
おおざっぱにはこんなところですが、個々の関数についてもっと具体的に、区分求積の計算をやると本当に微分との関係が現れるのか、基本定理に行き着くまでの道筋をこの後で確認していきます。
ところで、この基本定理を表す数式では、通常、定積分の表記を使って、次のように表現されています。
x の変数が妙なところに出ていて面食らいますが、これは、先に見てきたように、積分の原型である区分求積と直接対応しているのは定積分なので、それをそのまま記述したものです。
なぜこのようになっているのか、式の意味しているところを読みとることで、区分求積から定積分、そしてその一般化された形である原始関数への展開が見えてきますので、それを先におさえておきましょう。