まず、原始関数を微分して、その部分部分の変化の様子を示したものが「導関数」であり、逆に、導関数の部分部分の変化を寄せ集めて、その変化の全体の軌跡を、積分によって復元したものが「原始関数」です。
導関数の値は部分的な変化量(フロー)を表し、原始関数の値は、その変化量が積み重なった総達成量、累計量(ストック)を表します。直感的には、前者は、資金運用における利率や、運動における速度、水道から水を出すときの蛇口の勢いなどにあたり、後者はそれが貯まった、貯金の額や距離、盥(たらい)に満たされた水量にあたります。
このため、ある時点までに導関数が蓄積、達成した変化の累積量は、その時点における原始関数の値と常に一致します。
これが導関数が座標軸との間に作る面積は、原始関数の計算値を計算することでも算出できる、という意味です。
これまでの例では、長方形や三角形のような、既に面積を求める方法を知っていて、それ自体を直接計算できる簡単な例で双方を比べてきましたが、それを延長して、直接面積を求めるのが難しい、あるいはその方法が分からないような複雑な事例でも、原始関数という別のルートを使って、ズバリと狙いの答えを出せるところが、この方法のメリットです。
そして、この積分の原理を援用すれば、数学の世界の中で長く懸案になってきた、「曲線で囲まれた図形の面積」という大問題が、簡単に解けるのではないか、ということに最初に気づいたのが、ニュートンです。
最初に復習した頃にも触れましたが、もともと面積(area)を求める幾何の計算は、土地(area)の測量、特に農地の測量という実用上の目的から出発しました。しかし、実際の農地は、机上の図形のように整然と区画されているものばかりではなく、半端だったり曲がっていたりする場所も普通にあります。このため、曲線で囲まれた図形の面積を求めるという問題が、古代エジプトやギリシャの昔から、大きな課題になってきました(古代ギリシャの有名なアルキメデスに、既に関連の研究があります)。
それまでの数学者は、この問題を(主に細かく切り刻んだ部品を再度寄せ集めるという形で)非常に複雑で凝ったやり方で求めようとしたのですが、直線図形のように簡単な公式で求める方法は長く見つかりませんでした。17世紀に現れたニュートンが、微分の逆をたどればそれが容易に計算できる、ということを示して、この千年を超える難題を、目の醒めるような鮮やかさで、一挙に解決したのです。
ニュートンは、微分積分の基礎を自分で作りあげた創始者ですので、用語も自分で作り、それぞれを「流率(fluxion)」、「流量(fluent)」と呼びました。前者が「微分」、後者が「積分」にあたります。この用語は、残念ながらその後定着しませんでしたが、その呼び方には、上記のフローとストックの考え方がストレートに出ているところがとても面白いと思います。
それでは、この天才ニュートンが発明したこの積分の原理を使って、いよいよ曲線で囲まれた面積を、実際に出してみましょう。