【積分】フローとストック〜曾呂利新左衛門の蔵

前回確認した、面積に関する原始関数と導関数の関係を理解するために、数列のところで例に引いた、曾呂利新左衛門氏にもう一度ご登場願うことにします。

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数列のところでは、等比数列の性質を把握するうえで、新左衛門が殿様から褒美をもらう際に、トンチを効かせて、ほんのわずかな分量を前の日の倍々でもらうことにしたら、見る間に膨れ上がっていって、あっとびっくり途方もない量に、という話でした。

先には、このように、毎回もらう分、つまり「フロー」の部分にだけ着目していましたが、ここでは積分の性質を理解するために、それを少し変形して、新左衛門氏が自分の蔵にそれを持ち帰って、累計でそれがどのくらい溜まっているかという「ストック」に注目することにします。

ではまず最初の例として、曾呂利氏が、毎日一定の同じ量だけをもらって、こつこつとそれを貯め込んでいるものとします。米粒では少しアレなので、景気よく「小判」にして、毎日3枚づつもらえるものとしましょう。

フローとストック

この経過を図で表すと上のようになります。一日ごとのもらえる枚数は同じで一定なので、曾呂利家の蔵に溜まっていく小判の数は、右肩上がりに同じ比率で増えていきます。式から分かるように、両者は導関数と原始関数に対応し、前者は1回1回の「変化の量(フロー)」、後者は、それが積み重なった「累積量(ストック)」を示しています。徒歩や階段上りなどの運動の分析で、上の小判を靴あとに読み替えて、前者を「速度(歩数や段数)」、後者をその変化が積み重なった「距離」とみても同じです。

さて、このとき、毎回もらえる小判のその時点の累計数、すなわち、枠で囲った部分の枚数は、曾呂利家の蔵に行って、そこにある枚数と同じなので、そちらの方を数え上げることでも分かります。この場合、導関数が定量で一定なので、「タテ×ヨコ」で長方形の面積に相当する量が、その日に蔵にある小判を検分した「だけ」でも分かるということです。

導関数が作る面積が原始関数の値と一致する、原始関数の値は、導関数が作る面積を表す、というのは、こういうことです。導関数で変化の累計量をヨコに並べてベタ塗りに敷きつめた「広がり」としてみていたものが、原始関数ではひとつながりにタテにつなげて一本線の「高さ」になる、という感覚です。

もう一段バージョンアップしてみましょう。今度は、元の話に近い形で、もらえる小判の枚数が日を追うごとに増えていき、日数の2倍の枚数だけもらえるとします。

フローとストック

これを図にすると上になり、「毎回ごとの変化の量」は一定の比率で右肩上がりに増えるので、「その変化の累積量」は、はるかにキツい勾配でうなぎ登りに増えていきます。ですが、基本の対応関係は同じで、蔵の累積量を調べれば、今度は枠で囲まれた部分、つまり「三角形」の面積にあたる枚数が分かる、という仕組みです。

後の方の例では、図から分かるように、「導関数」と「原始関数」という点では枚数は充分一致していません。これは小判をもらえる回数が、1日に1回という形でまだ「目が粗い」からで、連続複利のときのような考え方で、もっと細かくしていけば、実際の二次関数の動きにどんどん近づいていきます。

フローとストック

そして、このことが、数列の和、すなわち級数と積分の関係という、積分のもうひとつの道筋につながっていきますので、この話は後でもう一度戻ってきたいと思います。

その前に、まず上の話を一般的な形で整理して、まとめておきましょう。


<参考にさせていただいた資料>
  Stock and flow ( Wikipedia )


タグ:積分 級数
posted by oto-suu 17/05/06 | TrackBack(0) | 積分 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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