元関数に対して、上のように両辺の自然対数をとります。すると右辺は、元の f(x) を対数関数で入れ子にした状態になりますので、合成関数の微分の公式から「外枠の微分×中身の微分」で、
となります。この式は便利で、対数微分法の基本形として、よくこのままの形で用いられます。たとえば、先の実数乗の微分を、これを使ってやってみましょう。両辺の自然対数をとって、
あとは、上の式をあてはめて、そのまま微分すると、
と、同じ結果がたいへん簡単に出せます。このとき、先に切った張ったで大騒ぎした、合成関数のとり回しはどうなってしまったのでしょうか? その秘密は上の最初の式にあります。この一般形を導くときに、既に合成関数の下ごしらえを済ませてしまってあるので、あとは結果をインスタントに当てはめればいい、というわけです。
ところで、この重宝な式を見ていて、一点引っ掛かることがあります。それは、先の自然対数の微分の公式と、結果がずれているのではないか、という点です。二つを並べてみましょう。
どうして、こういうことになってしまうのでしょうか?その理由は、これまた、左側の由来が合成関数であることにあります。左側は、右側のようにナマの x の対数関数を微分しているわけではなく、対数微分法で元関数を対数関数で二重に入れ子にした状態で微分しているので、こういう結果になっていたわけです。
言い方を変えれば、右側は、変数 x について微分していますが、左は表に見えている y についてそのまま微分しているわけではなく、入れ子で中に隠れている x について微分していることになります。
このように微分で複数の変数を扱う際に、どの変数について微分しているのかを明示することを、「 x で微分する」 と言います。特に、「チョン」をうつだけのラグランジュ記法では、上のように式の中にその変数が出てこない場合がありますので、誤解のないように、言葉による傍書きで補ってやるのです。関数が入れ子で、変数も多く出てくる合成関数や対数微分法で、頻繁に使われる表現です。