基本型に入れると上のようになります。このとき、真数の x は、真数条件から「x>0」です。
では、はじめましょう。このケースでもリミットの中の分子の差の部分を、ひとまとめに括って一つの項に変えてしまいたいのですが、対数の場合は、ちょうど具合よく対数の差の公式がありますので、これを使います。
その上で、後半の「1/h」の部分を、3行目のように分解します。なぜこうするかというと、指数関数のときの経験から、ネイピア数が隠れていることが予想されますので、この部分にそれを作れるのではないかという下心からです。すなわち、
これで式を置き換えて、
これで真ん中の部分にネイピア数の形ができましたので、あとは式を整理してできあがりです。対数の積の公式と逆数の公式を使っているところは、指数関数の場合と同じです。
これが対数関数の微分の公式になります。やはり、ネイピア数が鍵になる重要な役割を果していることが分かりますね。そこで、さらに、元の対数関数の底 a を、自然対数に揃えると、
と、あっと驚くシンプルな姿になります。指数関数のときと同様、自然対数と微分の相性の良さ、息のぴったり合った足運びは、これ以上のものは考えられないくらいです。
また、この最後の式では「1/x」という「反比例」の関数が、微分という計算操作を通して、自然対数・ネイピア数と直接つながっている、という格好になっています。先に、元関数の変化を表す導関数から、その元の関数を推定して復元するという演習をやりましたが、反比例という、何の複雑なところもない単純な式を導関数として元の関数を「復元」すると、そこに突然、自然対数が出現するのです。ネイピア数と微分の関係を理解するうえで、これもたいへん興味深い性質といえます。