さっそく微分の基本型に元関数をセットすると上のようになりますが、このとき注意するのは、今度は指数が変数で、整数を超えて滑らかに遷移しますので、先のベキ乗関数のときとは違って、二項定理は使えないということです。仕方ないので、じかに式を変形して、
そのうえで、この左半分の部分がどういう値になるかですが、ここから先に進むために、ひとつテクニックを使います。それは、リミットの中の分子の差の式の部分をひとつの項で置き換えてしまって、それを計算するとどうなるのかを観察する、というものです。微分の計算では、いつもこの基本型の「差の部分」が扱いにくいので、この箇所をひとまとめに括ってしまう、というのは、よく用いられる、定石的な手のひとつです。すなわち、
このとき、前回扱った真数条件にも注意しましょう。真数は正ですので、m は−1 以下にはなりません。また、これで極限をとるときに、一行目の式から h を 0 に近づけると a の h 乗は 1 に近づきますので、m も 0 に近づきます。
これで下準備ができましたので、上記を使って、ここから本格的に式を改造していきます。
最後の行は、対数公式を使って、対数の前の係数を真数の指数に繰り入れたものですね。
さて、ここで注目してほしいのは、上の(※)の部分です。これは m を小さくしていくと、ムムム、あのネイピア数に近づく式の型になっていることが分かります。実際にリミットで m を 0 に向かって極限をとっていますので、この部分は極限のリミットの動作も含めて ネイピア数「e」 に置き換えられます。そこで、
です。最後の行は、また対数公式で、底と真数をひっくり返したものを掛け合わせると 1 になるという性質を使っています(対数公式、使いまくりですね。強力です)。これで対数の底がネイピア数になりましたので、この部分は自然対数ということになります。
指数関数の微分は、これでめでたく完成です。元のシンプルな式に、これも余計なおまけがついて重たくなっているような気がしますが、先に分数関数のところで見たとおり、計算さえ合っていれば問題はなく、気にする必要はありません。
また、目を惹かれるのは、なんといっても改造の過程で、とつぜん、呼んでもいないネイピア数・自然対数が湧いて出てきて、それがでーんと最後まで居座っているところです。逆にいうと、このネイピア数の調味料がなければ、指数関数の微分は、ここまできれいに整理できません。これが指数関数の微分の大きな特徴になります。
これだけでも既に溜息の出るような、興味のつきない結果ですが、指数関数の微分で真に驚くべきことは、実はこのすぐ一歩先にあります。
次でそれをみましょう。