おさらいすると、指数・対数の用語で、累乗される元になる基数を「底」、指数によって累乗された結果の対象値を「真数」と呼ぶのでしたね。
先に扱った際は、この2つが取れる値の範囲はあまり意識しませんでしたが、指数・対数関数の微分で、連続した値を扱うときには、この点にも目配りしておく必要がでてきます。
たとえば、まず「真数」についてみると、
この例で、上段のふたつについては、指数を取ることができますが、最後の一段のように、真数を負の値にとった場合は、これまでの内容では指数を考えることができません。前回の内容も含めて、指数については、有理数から無理数までと、実数全体にまで拡張しましたが、それでも、このようなケースでは手が届かないのです。また、対数のところで確認したように、指数をマイナスの側に深く取ることで、真数の値はますます小さくなっていきますが、ゼロにはなりません。
そこで、指数・対数関数を、実数の範囲で扱う際には、真数を正の値に限定した形で考えるようにします。これを真数条件といい、実数の範囲で指数・対数の微分を行う際にも、この制約の中で扱います。
このことは、先に扱った指数・対数のグラフからも、視覚的に確認できます。
右下が対数関数のグラフになりますが、指数の拡張によって、指数・対数の y の値は、マイナスからプラスまで好きに取れる一方で、x の真数はプラスの右半面にだけ偏っています。反対に、対数関数の x と y を入れ替えた逆関数である指数関数は、x と y の関係が逆になっています。
底の条件
同じように、底についても条件を考える必要があります。次の例をみてください。左側のように「底」が正の値のときには、指数が整数の2乗と3乗とともに、その間をとった2.5(=5/2)乗についても、指数を拡張したことによって、自由に計算できるようになりました。しかし、右側のように、底がマイナスの値のときには、2乗は符合が反転して正、3乗では負ですから、その間はどうしたらいいのか困ってしまいます。やはりここにも限界があります。そこで、指数を滑らかに動けるようにした指数・対数関数を考えるときには、底についても正の値に限定した形で扱います。また、底が「1」のときは、ただの定数の関数になってしまいますから、通常これも除きます。
指数・対数関数は、通常このような制限をつけて扱うのですが、以上の話からは、指数・対数をもっと自由に計算できるように指数を拡張したものの、あるいは、逆にそれを通じて、いくつかの箇所で行き止まりにぶつかって、通行禁止の立て札を立てておかないといけないことを示しています。これをさらに踏み越えていくためには、さらなる概念の拡張、それもかなり大胆なチャレンジをしないといけないだろうということが想像できます。それはまた新たな話になりますので、この先の課題ということにしておきましょう。
さて、これで指数・対数関数の微分に着手する準備ができました。さっそく次回からとりかかります。まずは指数関数からです。