以前、対数の基本について勉強したとき、対数は指数と同じで、それを単独で取り出したものであり、もっと自由に計算できるようにするために、累乗根の考え方を使って指数を整数から小数・分数にまで拡張する、ということをやりました。小数・分数の指数ということは、指数が有理数(分数で表せる数)にまで拡張された、ということですが、そうなると、有理数と有理数の間を埋めている無理数は、指数に取れるのだろうか、という問題意識が、おのずから先に見えてきます。
実は、このことは、指数・対数関数をそれぞれグラフに書いたときに、既に暗黙のうちに含まれています。指数・対数関数が、なめらかな一続きの曲線としてグラフに書けるということは、有理数+無理数の実数の範囲で、グラフに歯抜けや乱れがないこと、つまり、有理数と有理数の間を埋めている無数の無理数についても、飛び飛びではない連続的な値として、そのまま関数の計算ができる、ということと同じです。また、指数・対数関数を微分する、ということは、関数のこうしたミクロな部分の挙動を覗きこんでよく観察する、ということなので、それが、この無理数の指数という考え方に、あらかじめ目配りしておいた方がいい理由でもあります。
無理数の指数は、隣り合う有理数(分数)の指数と連続的な値を取ることの確認として、上の √2 という値を指数に取ってみましょう。
ターゲットの無理数を挟んで、それに近似する有理数は指数に取れますから、その精度を高めていくことで、無理数を指数にとったときの計算値も絞り込んでいくことができます
みてのとおり、ここにあるのは極限の考え方です。無理数は分数で表せない数ですから、有理数のときのように、累乗根の考え方を使って、それ自体を狙い撃ちに定義することはできません。そこで、無理数の指数は、このように極限を使って挟み込むようにして定義します。
しかしながら、実はこの無理数の指数を正しく把握するためには、関数と微分そのものについての、もっと突っ込んだ(というより基礎的な)整理が必要で、今の段階ではまだそれが充分ではありません。ですので、ここでは単にそういうものであることの紹介として、このような考え方で指数は有理数を超えて無理数の値も取ることができ、実数全体に拡張できること、そして、指数の計算規則である指数法則も、無理数を含めたこの範囲で適用可能なことを確認して、先に進むことにします。