導関数の公式はこうでした。さっそくやってみましょう。例題には、前回、合成関数を説明するのに使ったものを使用します。
これを上の公式にあてはめると、
となります。前回も述べたとおり、いったん公式を手に入れておけば、式を開いてから微分しなくてもよくなるので、処理がたいへん簡単になります。
ここで、こうして実際の例を微分してみることで、改めて妙な感じがしてくるのは、こうしたケースで外枠のカッコの3乗だけの微分だけでは済まなくて、そこに余計な「オマケ」がつくことです。
なぜこうなるかといえば、その理由は、最初に合成関数の微分をスタートしたときの定義式の形にあります。関数が二重に入れ子になった状態で、中の x をスライドさせますので、それを開いていったときに、こういうオマケがつく、ということでした。
合成関数の場合には、このように、外枠の微分だけでは終わらなくて、「外枠の微分×中身の微分」という形になる点に注意しましょう。逆に、この中身が変数そのもので、「u=x」の場合には、その微分係数は 1 ですので、入れ子がない場合の微分に収斂する、ということになります。
ライプニッツ記法で書くと
ところで、この合成関数の微分の公式を、ライプニッツ記法で書くと、以下のようになります。これは、公式の導出を途中からデルタ記号を使って書き直すと、
となって、ライプニッツ記法の定義から、上のようになるからです。
ラグランジュ記法と、双方を見比べて気づくことは、このくらいになってくると、ライプニッツ記法の方が、扱いやすくなってくることです。
まず、上記の右辺にある2つの「du」は、前後にバラしたうえで極限をとっているので、それぞれが上下で一体で、相互に約分して相殺しているわけではありませんが、公式をみると、あたかも分数として約分して、値を払ったかのようにみえます。計算するときもやりやすいですし、公式として覚えるときも、覚えやすいです。
また、見映えそのものも、プライム記号の「チョン」を打つラグランジュ記法は、微分の計算が単純なときには、簡便でたいそう便利でしたが、計算が複雑で行が増えてくると、チョンを打つか打たないかで元の関数か導関数かと、大違いですので、途中で書き間違えてしまいそうで、かえって気を使いますし、見てくれも分かりにくいです。それに比べて、ライプニッツ記法の方は、記述自体もすっきりしていて、何の変数をどう極限をとったかの関係もはっきりしています。
ライプニッツ記法が、微分を記述するうえで優れた美点を持っていて、長く好んで使われてきた理由の一端が、少し見えてきましたね。