【微分】ちっちゃいΔは何の意味?

微分に関連する数式の記述の中でちいちゃな「△」の記号が出てくることがあります。これはなにを意味しているのでしょうか?

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この記号は、数学でも出てきますが、物理で微分を使うときに頻繁に出てきます。これは「デルタ」と読み、微分でターゲットの近くにとった差分(difference)のことを指しています。ギリシャ文字で、アルファベットの「d」に相当する文字です。

このデルタ記号を用いると、微分の定義式は、以下のように書き換えられます。通常は単独では用いられず、指定の変数とセットで、「何の」差分かということを指定するのがふつうです。

デルタ記号の意味

そして、「ライプニッツ記法」では、(ちょいとややこしいですが)この「△ xx の差分」を、さらに極限で 0 までつづめた状態のことを、まとめて「d」 という記号で簡略表示しているのです。すなわち、

ライプニッツ記法

です。この「d」の中に、極限のリミットの計算動作が取り込まれ、吸収されてしまっていることに注意しましょう。また、二階微分以上の高階微分では、微分した導関数をさらに微分するので、

ライプニッツ記法

となって、このカッコが煩わしいので省略して、最後のようになっています。つまり、この肩書の「2」は累乗の「数」を指しているのではなく、微分の階数を指しています。累乗とみてしまうと、上と下でへんなところに「2」が乗っているので、「なんじゃこれは」と驚いてしまいますが、そうではなくて、(ラグランジュ記法のプライム記号と同じく)微分の階数を示しているのです。

また、そういう次第で、この「d」やあるいはもとの「△」は計算動作を指す記号で、変数(数値)ではありませんので、分数のつもりで約分して勝手に取ってしまったりしてはいけません、というのが、ライプニッツ記法の注意書きでよく言われるところです。

さらに、この上下のdyとdxは、 実際の計算で見たように互いに連動して動くので、切り離さずに一体の記号として扱い、そのことをはっきり示すために、読み方も(分数のように下からではなく)頭から「ディーワイ・ディーエックス」のように読んでしまうのが一般的とされています。


このライプニッツ記法( Leibniz notation )は、英語圏のQ&Aサイトなどでみても、「難しい」「よく分からない」というボヤキがけっこう見られますので、馴染みにくいのは日本の学習者だけではないようです。そういう意味では、ちょっとホッとします。一方で、数学の専門家からは、この表記は、もっと微分の運用が高度になってくると、微分の特性をよく表していて取り回しがしやすいと、高く評価されています。数百年も主流で使われてきたのですから、実際にそのように扱われてきたわけで、初学者のとっつきにくさとは大きなギャップがあります。言ってみれば、はじめて口にする人には抵抗感が強いが、食べ慣れた食通にはたまらない珍味の食材、といった趣です。

習ったばかりの段階ではとてもそこまでの境地には達しませんので、数列のシグマ記法と同じで、おっかなびっくりそろそろと使いながら、無理せず、だんだんと慣れていきたいと思います。


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posted by oto-suu 13/12/08 | TrackBack(0) | 微分 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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