他の多くのケースと同じく、英語の名称の方が、具体的な操作の内容をそのものずばりで指していて、イメージが湧きやすいですね。微分とは、変化のある箇所について差分をとって、その差分を小さくつめていくことで、その部分の変化の様子を知ることです。
また、対象値を具体的な個々の値から変数で一般化して、具体値を入れるとその地点における速度や加速度のような変化率が計算できる関係式を、元の関係式(関数)に対する「導関数」と呼びます。

先の自由落下運動では、落体の法則を表す時間と距離の元の式に対して、速度を表す式が導関数であり、加速度の式がその速度の式に対する導関数です。つまり導関数とは固定的な呼び名ではなく、元の関数に対する関係を示した呼び名です。
導関数は、元の関係式(関数)の変化の様子を一般化して示した式であり、元の関数を微分することによって、導関数が得られます。数学において「微分する」とはすなわち「導関数を求める」ことです。
「導関数」は、英語の用語では 「デリバティブ (derivative)」 といいます。デリバティブというと、最近ではニュースなどでよく出てくる金融派生商品の「デリバティブ」が有名ですが、ともに(元の関数、あるいは商品から)「派生したもの」「引き出されたもの」という意味です。
そして、「微分する=導関数を求める」とは、落下運動の分析で工夫してきたように、具体的には、極限値リミットの機能を使って、元の関数 f(x) に対して以下の計算をすることです。

これが、微分の根幹の骨格を表す式です。狙いの箇所の傍(そば)に小さな差をとって、それをゼロに向けて絞り込んでいく、というのが式の意味でした。ここまでの落下運動の分析で、その片鱗が既に現れていましたが、この独特の計算の「型」から、たいへん興味深い、びっくりするような性質がたくさん飛び出てきます。微分の基本の学習とは、それらの性質を理解して、使いこなせるようにすることです。それをこれから取り上げていきます。
その前に、微分の用語に関する定義をもう少し固めておきます。