
これがガリレオ・ガリレイの「落体の法則」です。それまでの学説では、「重いものは早く落ち、軽いものは遅く落ちる」というのが定説とされていたのですが、ガリレオは、そうではないことを実験によって示したのでした。近代物理学だけでなく、いわゆる科学革命の全体がここからスタートした、記念碑的な転換点と言われています。
ところで、以上の事実を前提に、ここからテーマに取り上げるのは、この落下運動において、各時点で物体が示す「速さ(速度)」です。速さは、手を離して落下がはじまった時点では、速度ゼロで、時間の2乗に比例して通過距離が伸びていきますから、どんどん速くなっている、つまり加速していることが予想されます。この様子を、上の関係式からもっときちんと計算で示し、それによって、各時点の速度も、具体的な値で割り出せるようにしたいのです。
さっそくこれを考えていきましょう。上の話で、たとえば赤字のちょうど3秒時点での速度を知りたい、と思ったとき、どうしたらよいでしょうか?
「速度」は時間あたりで移動した距離で、この場合、3秒時点での位置は分かっていますから、それを0秒から3秒までの経過時間3秒で割ってみる、ということが、まず思いつきます。

しかし、これはあくまで0秒から3秒までの平均の速度であって、3秒時点での速度ではないな、ということもすぐに見当がつきます。0秒時点での速度ゼロから、滑らかに加速しながら落下しているので、最後の3秒時点の速度は、全体を均(なら)した速度よりは、もっとずっと速くなっているはずです。
では次に、もうちょっと工夫して、たとえば2秒時点と4秒時点の通過距離の差をとって、それを経過時間の差で割ってみる、ということにしたらどうか。ターゲットの周りの近いところで計算しているので、はじめのものよりはずっと具合が良さそうですが、それでもやはり「平均」の速度であることに変わりはなく、3秒時点での速度そのものずばりを示したものとはいえないでしょう。
われわれは、新幹線に乗ったり自動車を運転するときのように、滑らかに変化する中でのその時その時の速度、という存在に経験的に慣れているので、日頃はあまり意識しませんが(それがないと、たとえば自動車の運転で法定速度を守る、ということができません)、自分で実際にそれを計算しようとすると、実は案外簡単な話ではないことが、ここから分かってきます。
ではどうするか。次回で腰を据えて、これをもっと詰めて考えてみましょう。
<参考にさせていただいた資料>
空気がなければ本当に羽は鉄球と同じ速度で落下するのか ( GIGAZINE )
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