【三角比】積和公式・和積公式は何に使うのか

三角比・三角関数の第二部の最後は、このパートの本命である積和公式・和積公式です。この式は、三角比の和を積の形に、あるいは積を和に変える公式で、見かけは複雑ですが、ベースにあるのは加法定理です。

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積和公式

積和公式

これが積和公式です。ずいぶん難しそうに見えますが、この式は加法定理の加算と減算の式を並べて、辺々を足し引きするだけで簡単に作れます。コサインについても同じです。

加法定理


和積公式

和積公式

次は和積公式で、これは上の積和公式と逆に、和を積の形に変えます。この式は、積和公式の αβ を次のようにおいて、変数を入れ替えることで、これも容易に導けます。

和積公式


積和・和積公式は何に使うのか

この積和・和積公式は、この三角比のパートのはじめに述べたように、まず第一に、微分に使います。三角関数の微分の計算をするには、この公式が必要で、まさにこの公式を得る目的で、ここまで三角比の話を広げてきました。

またこの公式は、三角比(三角法)が、航海術(測量、天文学、暦学)に必要だった関係で、元の加法定理とあわせて Prosthaphaeresis (加減法) と呼ばれて相当古くから知られており、和を積の形に変えるというその独特の形態から、対数が考案される以前に、掛け算の計算を簡単にする用途にこの式を使えないかという研究がさかんに行われていました。対数の考案者であるネイピアも、この考え方をヒントに対数を作り出したそうです。つまり、この公式は、対数が生まれるひとつの母胎になったということができます。対数の歴史を描いた説明の中で、(一見ぜんぜん関係なさそうな)三角比の話がちらちら出てくるのは、まさにこの関わりを述べたものです。

当時はいわゆる大航海時代で、ヨーロッパの人々は世界各地に進出していました。そのための航海術にはサインやコサインの三角法が必須で、三角法も有効数字が10ケタ以上もある精密なものが作られていましたが、その計算、特にかけ算と割り算が困難を極めたのです。たまたま1590年に、ネーピアの友人がある事情でデンマークに行き、チコ・ブラーエの天文台を見ました。そこで三角法の式を利用して積を和に直す方法が使われていることを知り、ネーピアに伝えたところ、彼はこの話に刺激されて対数の研究を始めたそうです。

現代のわれわれからみれば、こんなこみ入った、サインコサインの入った式を計算するより掛け算を直接計算した方がよっぽど簡単そうに思えますが、当時の人たちには、それくらい掛け算をやっかいに感じていて、簡単にしたいニーズが強烈だったということですね。この対数前史の中には、レギオモンタヌス(ヨハン・ミュラー)や、新大陸を発見したコロンブス、グレゴリオ暦プロジェクトの中心になったクラヴィウスといった、数学史を彩る重要人物の名がたくさん登場します。

以上のような次第で、このいかにも複雑そうな公式は、機能のうえでも数学の歴史のうえでも大きな役割を演じた、意外な重要性をもつ格式ある公式、ということになります。

それでは、これで和積公式までたどりついて、当初の目的は達成しましたので、この式も手持ちに加えながら、次はいよいよ、数学苦手人間にとっては最大の難関のひとつ、「微分」にチャレンジしていきたいと思います。




posted by oto-suu 13/09/22 | TrackBack(0) | 三角比 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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