
はじめに、二項定理の項の要素のうち、a と b の二つの変数が作る「変数部」(係数ではありませんが)のもつ剰余の性質をみていきます。もう一度「あかたまあおたま」のときの次の図を見てください。

この図は、a を「あかたま」、b を「あおたま」とみて、二項定理の項の生成を可視化したものでしたが、約数という視点でみると、両端の項だけが、一方の要素だけでできていて、特異な状態になっています。左端は「あか」だけ、右端は「あお」だけです。これをたとえば a の「あかたま」について見ると、右はじのブルーだけの項以外は、すべて1ケは必ず「あかたま」を含んでいる、すなわち「a」を約数に持ち、割り切れる、といういことを意味しています。
ここから、二項定理に関して、まず次の剰余の関係を取り出すことができます。

上の合同式は、左辺を二項定理で展開したときに、モッド a に対して a を約数で含む項はすべて消去できることを示し、下の等式は、k を整数として同じことを合同式を使わずに書いたものです。
この関係は、剰余を分析するときに、剰余演算の合同式を補って、あるいはそれを使わずに代替する目的で、頻繁に使用される性質です。
この性質を使うと、「合同式の100乗問題」のところでとりあげたような問題を、合同式を使わずに、しかも同じように一撃で解くことができます。いくつかやってみましょう。

こんなふうに、法(割り数)を横目に見ながら、割られる基数をパカッと上手に分割して、そこに二項定理を適用します。「1」や「10」などをうまく使うとよいのも合同式のときと同じです。
どうでしょうか。合同式の威力も物凄かったですが、こちらもなかなかそれに引けをとらない強烈さです。