二項定理を応用で使用するときは、直接適用することももちろん多いのですが、そこから数式を変形して派生した、よく使われる部品の式がいくつかあり、それを合わせて手持ちにしておくといっそう便利に使えます。
二項定理は基本的な計算テクニックなので、フィボナッチ数列などと同じように詳細に調べ上げられていて、さまざまな面白い特性が知られていますが、ここではその代表的なものをいくつかみていきます。
二項係数の和
二項係数は、全部集めてきて合算すると、常に 「2のn乗」 になるという性質があります。
これはパスカルの三角形から図を通して視覚的に理解することもできます。「あかたまあおたま」のボール並べでもみたように、もともと最初の2ケからはじまって、倍々に増やしていくルールですので、そうなります。

また、式でみても、二項定理の展開式の左右両辺の a と b にそれぞれ「1」を入れると、左辺は2のn乗、右辺は a、b の部分が消えて二項係数だけが残るので、上の式が現れます。

偶数番目の項と奇数番目の項
このように、二項係数の性質を調べるときに、a、b にいろいろな数を入れて具合を観察する、というのは、よく行われるやり方です。上では、両方に「1」を入れましたが、今度は「a=1」「b=−1」を入れてみましょう。すると、左辺は相殺されて「0」になり、右辺は b が偶数乗の項はプラス、奇数乗の項はマイナスになります。

( ここでは、二項係数<binomial coefficient>を簡易に「C(n)」で表しています )
これはすなわち、二項係数は、互い違いに符合をひっくり返して足すと 0 になる、ということです。さらに、奇数番目のマイナスの項を集めてきて移項すると、

奇数番目と偶数番目の和は等しくなり、全体の和がちょうど半分に分割される、という性質もあります。下表は、横軸に式の次数、縦軸に項番をとり、二項係数を並べて、奇数番目と偶数番目の和を比べたものです。

二項定理の展開した項の数は「次数+1」なので、項数の全体は偶数個のときもあれば奇数個のときもありますが、いずれの場合でもちょうど半分に分割されるところが面白いですね。
二項係数の性質のチェック、もう少し続けます。