まず、各項の a と b の次数は、前回みたように、左から「0 〜 n」の範囲で、ひとつづつ増減しますので、

となります。よって、それが冠する二項係数と組み合わせると、各項のそのものの構成は、

と表現することができます。これを二項定理の一般項といいます。
この式にひとつづつ値を入れていくことで、二項定理のすべての項がアウトプットされますが、名称からも分かるように、これは「数列」の考え方で、二項定理の各項を数列の項として順繰りに出力していることになります。
また、二項定理の全体は、この項をすべて集めてきて足したものになりますので、数列の項の総和、すなわち級数ということになります。従って、数列の和を表現する「シグマ記法」を用いて、

二項定理の全体は、このように表現できます。
パスカルの三角形を使った計算は、「帰納的」な計算(計算するのに前の段が必要で、一歩づつ上るしかない)で、数列でいえば漸化式的な考え方でしたが、こちらは一般項ですので、次数が多い式でも途中の経過を全部飛ばしていきなり目当ての式を構成することができます。
二項定理の学習の大きな目的のひとつは、この式までたどり着いて、その原理を理解することです。いきなりこの式を渡されて、「a+b」をn乗したものは、この式で表せるんだよ、さあ、覚えて使いなさい、と言われたら、数学嫌いの人はたぶん「うへぇ勘弁して」となってしまうと思います。ここまで一歩一歩、理屈を追いながら上ってきましたので、拒絶感がだいぶん薄れて食いついていけるようになっていたら、ここまでの資料も作った甲斐があったというものですが、どうでしょうか。