前回確認したように、複数の要素を持つ母集団の中から、並び順を意識して取り出したものが「順列(permutation)」 です。前回の野球チームの例もそうですが、この「並びを問う」とは、椅子取りゲームにたとえていえば、座る人間と座られる椅子の両方が個別に識別(identify)されている状態です。単に椅子に座れればいいわけではなくて、「誰が」「どの椅子に」座るかまで、意識されている状態です。
こういう考え方でメンバーの割当てを思案することは、日常生活の中でもたくさんの実例があると思いますが、ここではイメージしやすい例として、「商店街の福引き」というたとえを使って説明していくことにします。福引きはいろんな当たりパターンを作れるので、この順列・組合せの説明にうってつけだからです。
それではまず、いちばん計算が簡単な、単純な形態から考えてみましょう。福引きの引き手と同じ数と種類の景品が親切に用意されていて、「参加者全員にそれぞれ異なる景品が必ず当たる」という形態です。これは、互いに異なる引き手が同じ数の異なる景品に割り当てられる、ということで、順列の定義の表現に言い換えれば、「n個の要素からn個全部を取り出して並べる順列」ということになります。この例では、漏れなく数え上げると全部で何パターンがあるでしょうか?

このケースでは数え上げの考え方は上図のようになります。例として5人の抽選者が5種類の当選品を引く福引きとしましょう。まず、一等賞の景品については、5人の誰かが当たる可能性がありますので、「5通り」です。
次に二等賞については、一等賞が誰か1人に割当てられたとすれば、残りは4人です。上の一等の5通りそれぞれについて、この残りの4通りが考えられますので、すべてを数え上げると「5×4」の「20通り」になります。
以下、順々に三等、四等と割り当てていくと、最後の五等で残ったのは、余りものの景品と同じ数の、四等までの景品に全部外れた最後の1人です。このように考えていくと、5個の景品を5人が引く福引きの総パターン数は、以下の計算で求められます。

見てのように、この計算は、数をひとつづつ減らしながらすべて掛けていく「階乗」の定義と同じです、すなわち一般化した形で書けば、

となります。このように「順列・組合せ」の数え上げの計算は、階乗の考え方と本質的な部分で通ずるので、階乗の計算がおおいに活用されるのです。
ちなみにこの総パターン数を参考までに図示すると、以下のようになります(「5人×5等」だと長くなり過ぎるので、「4人×4等」で示してあります)。上の計算式だけでいまひとつピンと来ないようでしたら、両方を見比べながら確認してみてください。
