まずは、基本の用語の定義からいきましょう。いくつかの要素を持つ母集団の中から、並び順を意識して取り出したものを 「順列(permutation)」 、並び順を問わないものを 「組合せ(combination)」といいます。「並び順」を問うか問わないかが両者の違いです。
これを野球チームにたとえていえば、「組合せ」は、ちょうどレギュラーメンバー、一軍選手の選抜に相当します。「誰を選ぶか」「選ばれるか選ばれないか」が問題で、選ばれたあとの順番は、とりあえず問わない状態です。
これに対して「順列」はそのメンバーで組んだ「打順」あるいは「ポジション」に対応します。単に一軍メンバーに入っただけでなく、その中でどの順位につくかまで評価された状態です。打つ方でいえば、「4番バッター」ならチーム一番の強打者の評価、7番や8番なら、ちょっと劣るつなぎ役、などといったところでしょうか。
数式の中で扱うときには、この「順列」「組合せ」を、重複なく数え上げた総数を、それぞれの頭文字をとって、以下の記号で表します。

具体的にはこんな感じです。

テキスト内で平文で書くときは、「P(5,2)」のように書くこともあります。
これも、数が小さい場合は、手作業で数えていってもなんとか対応できますが、母数が多くなると急激に場合分けが多くなって追いつかなくなります。共通して算出する計算方法があると便利で、これをどう考えるかがここでのいちばんのテーマです。
二項定理でこの「順列・組合せ」の考え方が用いられるのは、二項定理の各項の係数が、この「順列・組合せ」の手法を用いて算定できるからです。また、前回の「階乗」が二項定理と関係するのも、それがこの「順列」「組合せ」の計算に使われるから、というのが理由です。
二項定理で使用するのは、このうち「C:組合せ」の方になりますが、計算式の案出は、まず並びを意識する「順列」の方をベースにして、その発展版として「組合せ」の方に進むので、最初に「順列」の数え上げの仕方からみていきます。