以前も紹介しましたが、階乗は、ある数を1づつ減らしながらすべて掛けた数のことで、感嘆符を使って表します。

階乗の計算を行うときには、通常、整数以外は使いません。また「負の階乗」というのもありませんが、「0(ゼロ)の階乗」だけは計算上必要で、頻用されます。ここでどうしても引っ掛かるのが、ゼロの階乗を「0」ではなくて「1」と定義するという考え方です。

ゼロの階乗はなぜ1なのか

上のような流れでいくと、ゼロの階乗は当然「0」で、「1」というのはおかしいように思えます。これをどう考えるかは、いろいろな説明の仕方がされていますが、自分としては関連リンクの英語のサイトで用いられていた説明がいちばんしっくり来ました。
階乗は、よりきちんとした形で「帰納的」に定義すれば、「ひとつ前の数の階乗に自分自身を掛けた数」である、と表現できます。そう定めると、「1の階乗」は、「0の階乗」に「1」を掛けたものになりますので、「0の階乗」だけは「1」でスタートしておかないとおかしい、というわけです(この定義は0の階乗自身は当てはまりませんが、0はそこから下はない「初項」を定義したものと解されます)。

考えてみると、「0の階乗」が必要だから、と「1の階乗」のさらにひとつ下を設けるとき、最初のような遷移では、「1」から「0」になるところで突然「0」が出てきて、実はスムーズに話がつながっていないことが分かります。「0」も必要だ、ということで、全部のケースに「0」まで入れてしまうと、全部の結果が「0」になってしまうからです。二番目の定義では、そこがきちんとクリアされた定義になっています。
「ゼロの階乗」を「1」である、と受け入れてしまえば、階乗を使った、ネイピア数の無限級数(数列の和)への展開式も、さらに美しくてさらに驚くべき、信じられないような完璧な姿で表現されることになります。

そして、先に少し種明かしをすると、このネイピア数の展開式に現れている階乗は、たまたまなんとなくそうなっているわけではなく、実は階乗が二項定理を分析するのに必要なのと同じ理由で、二項定理を介して底のところで互いにつながっています(ネイピア数の定義の式は、二項定理の形に似てますね)。二項定理が数学全体の中でもいかに重要なものであるかが、うかがえる話です。