
前回指摘したように、この図で各マスの値は、すべて両斜め上の値の和になっています。従って、同じ原理でこの下を編み物を編むように、どこまで続けて作っていくことができます。たとえば「?」の部分の次の次数の項の係数は、「56+28=84」と、簡単に割り出せます。
二項定理で各項の係数を抜き出して作ったこのピラミッド型の配置図を「パスカルの三角形(Pascal's Triangle)」といいます。パスカルは、「人間は考える葦である」という名言を残した、あのパスカルと同じパスカルです。神学者・哲学者として有名ですが、数学と物理学の分野でも優れた業績を残していて、この二項定理の関連で、数学的帰納法を明確な形で使用したのも、パスカルが最初と言われています。
さて、二項定理をさらに深く調べていくためには、いくつかの道具立てを整理しておく必要があります。そのひとつは「階乗(factorial)」です。以前ところどころで少しだけ触れましたが、本格的に使い回すのは、この二項定理が初めてになります。そこでしばらく寄り道になりますが、まずこの階乗について、新たな知識も追加しながら、もう一度おさらいしていきましょう。