それではまず、それがどんなものかから見ていきます。ここでの学習のはじめの頃、因数分解の公式を確認したことがありました。

この因数分解の公式では、カッコに掛かっている次数は「2」でしたが、「二項定理」は、この次数が「2」よりももっともっと大きくなっていった時に、式を展開した形がどうなるかを与える定理です。二項定理をマスターすると、もっと大きな次数のときに、式を素直に展開すると、左から何番目の項がどうなっているか、ということを直接指定することができます。このことが、数学の他のさまざまな分野で大きな関わりをもってくるため、二項定理はたいへん重要なものとされているのです。
では、手始めに、この次数が小さいはじめのあたりを実際に力づくで展開して、式の形がどんな具合になるかを観察してみます。このくらいであれば、丁寧にやっていけばまだなんとか手作業で展開できますね。

式の外観から既に把握できる特徴
これだけの計算例からだけでも、既にさまざまな興味深い特徴を読みとることができます。思いつくままにいくつか列記してみましょう。- 各項の係数は中心で折りかえして、左右対称になる
- 左から2項目(=右から2項目)の係数は元式の次数と同じになる
- 項の数は「次数+1」ケになる
- aの次数は左から1づつ減っていき、bの次数は1づつ増えていく。各項のaとbの合計の次数は元式の次数と同じになる
次回からより踏み込んで、これらの特性と、それらが生じてくる計算上の根拠を調べていきます。