前回の内容から、72の法則を数式で表したものが上記でした。さっそくこれをもっとかみ砕いて見ていきましょう。まず、左辺を任意の底 x について底の変換公式で分解すると、
となります。そこで左辺をこれと置き換えると、式全体は、
です。ここから、72の法則が成立するためには、分母側と分子側で、それぞれ以下の式が成り立っていればいいことになります。
では、まず分子側の(1)の式で、これが成り立つ底の x を探しましょう。この式は x の 0.72乗が 2 という意味ですが、ここから x を逆算するには、指数をひっくり返した累乗根を求めればよいということになります(たとえば、2の3乗が8であれば、8の3乗根が2です)。累乗根は分数の指数と同じなので、これを電卓か表計算ソフトに計算させると、x はだいたい 2.62 くらいになります。
これで x が求まりましたので、(2)の分母側の式にこれを入れて両辺を比べると、
このように、おおむね一致していることが分かります。特に金利の低い部分ではほとんど一致してますね。このように、分子側の(1)の式が成り立つ底をとったときに、分母側の(2)の式がおおむね成り立つ、あるいは分母側の(2)の式がおおむね成り立つように、分子側の(1)の式の底をとってある、というのが、72の法則がよってたつ数学的な足場です。
「69の法則」 「70の法則」?
今度は逆にこちらの分母側の(2)の式から見てみましょう。上の内容から、真数に累乗の指数をひっくり返した累乗根をかけると元の底が求まるので、ここで、仮に R=1/r とおくと、
と、ネイピア数の定義の式に似た形になります。つまり、この r が充分に大きいなら、
です。r は R の逆数ですから、「 r が充分に大きい」ということは、「金利の R が充分に小さい」ということと同じです。従って、底を自然対数にとれば、金利 R が低い部分では、この式は両辺がよく一致する、ということになります。よく72の法則の説明で、底を自然対数でとって、金利が小さければ以下の式が成り立つ、と書いてあるのはこのあたりの話を述べたものです。
ちなみに、底を自然対数の 2.718... にとったとき、逆に分子側の(1)の式の右辺は、72 より少し小さい 69.31.. くらいになります。そこで、金利計算ということで自然対数の顔を立てて、これを「69の法則」や「70の法則」ということもあるようです。少し水増しして「72」でもっとも普及しているのは、もちろん約数が多くて暗算で割り算するときに使いやすいから、というのが理由でしょう。
いかがでしたでしょうか? いきなりこのページだけを見た方の中には、なんだか数式ばっかりで、ずいぶん難しい、と感じられた人もいるかもしれません。ですが、使っているのは、対数 の初歩的な知識だけですので、もしよかったら、この機会にそちらの説明もいっしょにご覧になってみてください。