72の法則は 「金利のパーセントの数字で72を割ると、複利で運用したときに”倍”になるおおよその期数が分かる」 というものです。金利を年利とすれば、必要な年数がわかることになりますし、逆に倍にしたい期数で72を割れば、必要な金利の目安を知ることもできます。たとえば、6%の年利であれば12年かかる、10期で倍にしたければ、1期平均7.2%以上の平均運用成績が必要、といった具合です。「法則」といっても数学的に厳密に成り立つかちっとしたものではなく、日常の中で便利に使える知恵、といった種類のものです。
72の法則はとても有名なので、なぜこうなるのかを金融や経済学の先生が説明している資料もネット上でたくさん見られます。数学的に洗練された証明はそちらで見てもらうとして、ここでは例によってもっとドン臭いやり方で、これまで学んだ知識を活用しながら挑戦してみましょう。
まず、金利のナマの値を R、運用期数を y とすると、「複利効果」のところでみたように、複利運用で2倍になることは次の式で表せます。
必要な期数 y は累乗する回数、すなわち指数=対数ですから、これを対数の定義によって単独で抜き出して対数の式で書くと、
ですね。従って、72の法則を全体として数式で書けば、
となります。(1+R) を 2 にする 指数=期数 は、金利をパーセント表示した値で72を割ったものとだいたい一致するよ、というのが式の意味です。この式を表計算ソフトに入れて、どのくらい当てはまるものなのか、みてみましょう。
実際なかなかいい感じに近似しています。金利が大きくなるとずれが増してきますが、現実にはここまでの金利はほとんどないので、日常的な場面で暗算で計算するにはじゅうぶん便利に使えることがわかります。ちなみに両方をグラフにして全体を俯瞰すると、
すばらしい一致ぶりです。一方の目盛りを「対数表示」にして「片対数グラフ」でみてみましょう。
このくらいに拡大してようやく差がはっきりしてくるくらいです。
では、こうした近似がなぜ生じるのか、上の整理をベースに、次回で、その数学まわりの事情について考察します。