まず最初は、「LN」です。これはもちろん「natural logarithm」の略で、底の「e」を省略して続けていきなり真数を書き、これで自然対数であることを表します。
次は、「LOG」です。先に対数のところでみたように、これは「10」を底とする「常用対数」の略でもありますが、分野によっては自然対数を表すことになっていて、表現がカブってしまっています。
以上から、「LN」が用いられているときは、自然対数であることはまちがいないが、「LOG」が用いられている際は、常用対数と自然対数の両方の可能性があるので、ちょっと注意しなければならない、ということになります。
一般に「LOG」を常用対数で用いるのは、(当然10進数の)実測データを対数で管理する化学や工学などで多く、「e」を底とする自然対数で用いるのは、理論的な計算の機能として対数を駆使する理論物理や(当の)数学が多いとされています。
一方、対数の裏返しで指数の表記として用いるときには、「EXP」という略記もよく用いられます。「EXP」は「exponential(指数関数)」の略で、続けて指数を書きますが、このときの累乗される底は、なにも書かれていなくても自然対数のネイピア数「e」です。
表計算ソフトの関数機能でも、同じ表記ですね。
よくプロスポーツの有名選手で、「ミスター・ジャイアンツ」「ミスター・タイガース」などと称して、名前を言わなくても誰だか分かるほど凄い選手、という表現の仕方がありますが、それとちょっと似ています。指数・対数で「ザ・指数(関数)」と言ったら、なにも言わなくてもそのときの底は自然対数、ネイピア数ということで、そのくらい重要、言うまでもなく明らか、というわけです。ネイピア数が、数学の中でいかに基本的なものとして扱われているかがうかがえます。