【数列】年利と月利の問題

ここまでさまざまな切り口から金利の計算についてみてきましたが、ひとつ積み残してきたことがあります。それは、年利を月利に直すとき、月数で割るという考え方です。これは慣例としてそのようにしているものですが、まちがいとまでは言い切れないものの、かなり微妙な内容です。

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「元利均等払い」を計算するW〜実際の計算例:大人が学び直す数学

ローンの場合

ローンの場合には、一般に単利適用なので、その限りでは年利を月数で単純割りすることで、計算上もまちがいではありません。ただ、実際の金利計算は残債方式で行いますので、表示されている年利は、月利を寄せ集めただけの、相対的な目安にすぎず、計算方法を知らない一般の契約者がその金利をみても、実際の利払いがいくらになるのかはぜんぜん見当がつきません。

<100万円を年利12%、元金均等返済で返済する例>

<参考にさせていただいた資料>
  利息計算について ( 群馬銀行 )



投資運用の場合

投資運用の場合には、それが複利運用であるのなら、年利を均等割りして月利にする、という考え方は単利のものになりますので、計算上もおかしい、ということになります。以前、「相加平均と相乗平均」の項でみたように、複利の場合は、本来は累乗根をとらないと、複利でまわしたときに元の年利に戻りません。

<100万円を年利12%で複利運用する例>


しかしながら、(1)定期預金等の場合には、一般にローンに比べて金利が大幅に低く、どちらでやってもそう大きく額は違わないこと、(2)ローンと運用で考え方を共通に揃えられて面倒がないこと、(3)「相加平均>相乗平均」から、誤差分は運用者の損ではなく得になる方に出ること、などの理由でそのようにしているのではないかと想像されます(これは推測ですので、ほんとうのところがどうかは分かりません)。


<参考にさせていただいた資料>
  金利の表示方法( Wikipedia )



日利も同じ、海外でも同じ

この運用は、「年利−月利」間だけでなく、「月利−日利(「日歩(ひぶ)」といいます)」間でも同じです。いわゆる「日割り計算」になります。また、すべての国は分かりませんが、ヨーロッパ、アメリカでは共通の運用のようです。この月利を足し合わせた単利表示の金利を、日本では「実質年利/実質年率」と称していますが、英語圏では「nominal interest rate (名目金利)」がこれに該当するものとみられます。これに対して、実際に複利を適用して計算した金利は、「effective interest rate (実効金利)」と呼ばれていますが、これに対応する用語は、日本語圏では見当たりません。





この慣例が数学上の重要な考え方にもつながっている

さらに、これがただの商習慣にとどまるのであれば、肩をすくめて日常生活の中で受け入れればいいだけですが、いちばん困惑させられるのは、この商業上の慣例が、数学の中でも最も重要な定数のひとつである「ネイピア数(自然対数の元)」の発見にそのまま地続きにつながっていることです。

というわけで、この妙な流れで、そのまま自然対数の話に入っていくことになります。なんとも奇妙な入り口で、まるでおとぎ話に出てくる裏口しかない魔法の館のようですが、自然対数がわれわれの現実上の直感とつながっているのは、ほとんどここだけですので、ここがみんなが膝をついてそこから入る通用門、けもの道なのです。


posted by oto-suu 12/09/09 | TrackBack(0) | 数列 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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