表計算ソフトの「財務関数」は、上記のような計算が一発でできる強力な関数ですが、使い方が分かりにくいのと、中でどういう計算をしているのかが不明で、ほんとうに正しく使えているのか検証もできないことから、使うのをやめてしまう人が多い機能です。実際に、ソフトベンダーのヘルプやサイトの解説でも、中身の計算式まで書かれているものはほとんど見当たりません。ここまで等比数列の知識を応用して、積み立てや分割返済の具体的な計算方法について勉強してきましたので、それを使ってこの財務関数がどんな計算をしているのか推定してみましょう。財務関数には多くのバリエーションがありますが、ここではその基本である FV関数 と PMT関数 を例にみていきます。
FV関数
FV (Future Value)関数は、その名のとおり、一定の利率で資金を積立運用した時に将来価値、すなわち運用額が幾らになるかを算出する関数です。この関数は先の積み立て運用を計算する式に対応していると考えられます。
この式で各用語は、「将来価値」は満期受取額に、「期間」は積立回数、「定期支払額」が積立額に対応します。「現在価値」は頭金に対応し、あれば設定します。また、「支払い期日」は、払込を各積立期間の期首にするのか期末にするのかを指定するもので、積立の際には通常「期首」の「1」をセットします(これについては後で詳述します)。
では、両方の計算を比べてみましょう。最初に、積立貯蓄のところで使ったサンプルの例を入れてみます。頭金10万円で1期あたり5万円の積立を複利2%で10期運用するケースです。表計算ソフトはLibreOfiice 3.5を使用しています。
積立貯蓄の計算式の結果と一致していますね。ここで、金額の値をマイナスをつけた負の値で入れていますが、財務関数では、自分の手元から払込みでお金が出て行くときにはこのようにマイナスを入れる約束です。
もう一例、今度は頭金なしでみてみましょう。1回あたり2万円で5年60回の積立てを1期あたり金利0.1%で運用するケースです。いくらになるでしょうか。まず、財務関数では、
3万7千円ちょっとが利息です。次に計算式からの結果を WolframAlpha でみると、
見てくれがちょっと分かりにくいですが、同じ値になっていることが確認できます。
財務関数は複雑な金利計算が簡単にできる点がいかにも関数機能らしい魅力的な関数ですが、ソフトのバージョンによってはバグがある等の指摘もあって、(特に仕事で使うような場面では)ますます尻込みしてしまいます。こんなふうに自分で検算できれば保険になるので、だいぶん使い勝手も変ってくるのではないでしょうか。
続いて PMT関数 について、同様に確認します。