【数列】計算式で考える元利均等返済とリボ払いのリスク

ここで、作成した「元利均等払い」の計算式をしばらくじーっと見つめてみます。なにが見えてくるでしょうか?

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元利均等払い

といっても、ただ眺めていても文字通りつかみどころがありませんので、ひとつ視点を定めることにします。それは、無限数列のところで取り上げた「極限の目」でこの式を見る、ということです。

すると、この式には極限値の判定でみたときのように、分数が入っていますから、この分数の部分は「n」の返済回数を大きくしていくと「0」に近づいていくことがわかります。

元利均等払い

従って、項の値全体は「D×R」、つまり「借入額×金利」の額に近づいていきます。すなわち、

元利均等払い

です。このことはなにを意味しているでしょうか。考えようによって、いろいろなことを読みとることができると思います。まず1点目は、

  • 金利が同じなら毎月返済額には借入額に応じた下限がある
    (返済回数をどれだけ増やしてもそれ以下にはならない)

というものです。多くの場合、ローンを借りるときには、金利はローンのメニューでだいたい決まっていて、その中で借りたい額と毎月支払える額の二つの考慮点があると思いますが、元利均等返済では借入額からみた毎月支払額は(計算上)下限が決まっていて、分割回数をどれだけ多くしても、それ以下には下がらないのです。この下限額は上の「借入額×金利」の式で与えられます(この金利は年利ではなくあくまで1回あたりの分に直した値です)。これを逆にいえば、

  • 金利が同じなら負担可能な毎月返済額で借入可能な上限は決まってしまう
    (返済回数をどれだけ増やしても借入可能額は増えない)

ということになります。直感的には返済回数を増やせばいくらでも返済額を少なく落とせ、多く借りられそうなイメージがありますが、そうはならないということです。また、ここから次のこともいえるでしょう。

  • 返済回数を増やして毎月返済額の下限に近づいた状態では、利払いと
    総支払額だけが(際限なく)膨らむ

もうそれ以上には下がらない月額返済額を、延ばした返済回数分だけ延々と払いつづけるので、必然的にそういうことになります。

たとえば40万円の借入を年利15%(これは現状クレジットカードでふつうにある利率です)で行ったとして、返済回数を計算上極端に長くとってみると、

元利均等払い

のようになり、月額支払額は10円しか違わないのに、利息と総支払額は60万円近く違う、ということになります。この段階になると、借り手はほとんど利息をローン業者にただプレゼントしているような状態です。

現実にはさすがにこんなむちゃな返済パターンは存在しないでしょうが、それでもこうした極端なシミュレーションから読みとれるのは、借りる側としては、やはりこの借入額の上限と返済額の下限の間の差を少しでもつづめること、つまり負担可能な範囲で毎回の返済額をできるだけ多く払ってしまうのが利払いを抑えるうえで望ましく、反対に、ローン会社やクレジット会社のような貸し手としては、この上限と下限をローン契約者にできるだけぎりぎりいっぱいに取らせること、言い換えれば、借り手が1回あたりに支払える返済能力はそれぞれの家計の状態で(月に1万円とか5千円とか)だいたい決まっているでしょうから、その範囲で可能なショッピング枠上限を設けて、それをいっぱいまで使い切ってもらい、返済回数をあまり意識させずに、結果としてそれをできるだけ長くとってもらうことが、利息収入を最大化するうえで合理的、ということになります。このような前提で設けられているのが、いわゆる「リボルビング・ローン(リボ払い)」のメニューではないかと推察しますが、どんなものでしょうか?(たとえは悪いかもしれませんが、ガチョウの細いノドを借金のエサを切れ目なく通していっぱいに太らせたローンのフォワグラみたいなものです)


これらは法的制約や与信設定などの他の要素は無視した、純粋に計算上からみた話で、またあくまでも元利均等払い、という形態の返済方式の場合です。クレジット払いやローン契約の検討をするときに、いずれも参考になる情報だと思いますが、裏を返せばちょっとコワい話でもありますね。


posted by oto-suu 12/07/28 | TrackBack(0) | 数列 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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