実際に貯金をする場合には、こういうやり方が一般的ですね。ですが、計算は、このケースになると、とたんに難しくなります。最初に元金を入れるだけのケースでは、等比数列の一般項で計算できましたが、このケースでは毎期追加される積立額に、その期分の乗数をかけた額が加算されていきますので、等比数列の和、すなわち等比級数の公式が必要になります。
これも実際の例でみてみましょう。例として、頭金を10万円おいて、1期あたり5万円を預け入れながら、2%の複利で運用する、というケースを想定します。前回と同じように、最初の頭金を b、積立額を a、金利を R((1+R)=r )とおくと、まず初回の運用は頭金に1回分積立を加えてそれに金利が掛かりますので、以下のようになります。
次に2回目の積み立ては、上記の運用額にさらに1回分の積立額を加えて、そこに金利を掛けますので、
ですね。3回目以降は以下同様に、
ここで、n 回目の運用合計の (A) の部分は等比数列の和ですので、公式をはめこんで、
これが、積み立て貯金の運用額を計算するひとつのモデル計算式になります。上の例で積み立てを10期行うとして、実際の値を入れて計算してみましょう。
これで、自分で積み立て貯金の運用額を計算できるようになりました。積み立てなしのときには単なる等比数列の一般項だったのに、積み立てを加えると「等比級数」になるのは、細切れの積立額にそれぞれ異なる回数の複利がかかり、その合算になるからです。等比数列の和の公式はいろんな場面でたいへん重要で、ファイナンスの計算でもよく使われますよ、と書きましたが、さっそく威力を発揮しました。この公式をあらかじめ持っておかないと、上の計算式を作り出す、あるいは理解するのは、なかなか難しいです。