まず、フォボナッチ数列の特性方程式は上記でした(何度も使い回してだいぶん馴染みました)。これを、左辺の「1」を右辺に移して、
こう直すと、右辺の x にもう一度同じ式を入れ子で入れることができるので、「連分数」を作ることができます。
この作業は繰り返しどこまでも続けていけますので、「1」だけでできた「無限連分数」ができあがります。
また、この x は黄金比ですから、この無限連分数は、黄金比を表す無限連分数、ということになります。
なんだか無理やりでウソっぽいでしょうか? 確認のために前に「数の構成」の節でこしらえた「連分数計算機」にかけてみましょう。
すると、連分数の各階層が作る分数比は、すべてフィボナッチ数列の比になっています。この分数比は、各階層における連分数を畳んで通常の分数に直したものですから、「1」の入れ子を続ければ続けるほど、この比は黄金比に近づいていきます。よって、全体としてこの無限連分数が黄金比に対応していることはまちがいありません。
「数の構成」の最後の記事で触れた「1」だけでできたもっともシンプルな無限連分数がこれになります。この無限連分数を、「究極の連分数」と呼んでいる資料も見受けましたが、それぞれが固有の無理数と対応する無限連分数の中で、このもっとも基本的な連分数が、円周率でも他のどんな重要な無理数でもなく、他ならぬフィボナッチ数列と黄金比に割り当てられているというのは、たいへん印象的です。
さて、難しくて楽しかったフィボナッチ数列はこれで終わりで、次回からはいきなり世知辛い浮世の話に引き戻されて、最初にも触れた「金利」がらみの話題を見ていきます。フィボナッチ数列の奥には、こんなふうに黄金比という御本尊が控えていましたが、こちらの金利まわりの奥には、数列のもうひとつの天王山、ラスボスである「自然対数」が待ちかまえています。名前の通り「対数」にもおおいに関係しますので、もう忘れちゃった、という方は、前もって軽くおさらいしておいていただくとよいと思います。