まず、素材をチェックしておきましょう。フィボナッチ数列の一般項、あるいはビネの公式と、その元となった特性方程式です。
では、はじめます。フィボナッチ数列の隣り合う比をとると、それは上の一般項の式から以下のように表せます(逆数を掛けますので、元のビネの公式の分母は相殺されて消えますね)。
この極限値を求めるわけですが、分子側の方が乗数が一回分多いことに注意しながら、前回取り上げた累乗で割る必殺技を使って、分母分子を Xのn乗で割ってやります。
すると、上のようにけっこうきれいな形に整理できました。さて、ここで、カッコの中の「y/x」という成分に注目します。この部分は、特性方程式から、x だけの式に変形できますが、x を黄金比の大きいほうの値(1.618…)とすると、その絶対値は 0 と 1 の間に収まります。
従って、これで元の式は 0 に向かって小さくなっていく変数の部分と値の変わらない定数の部分にすっきりと仕分けできたことになります。
n をどこまでも大きくしていくと、以下の (A) の部分は、小さくなってどこまでも「0」に近づいていき、(B) の値は「1」にどこまでも近づいていきます。よって、式全体の値は、x すなわち黄金比だけが残って、どこまでもそこに近づいていく、という寸法です。
以上で完成です。エッ、これで終わりなの?と思われるかもしれませんが、ハイその通り、これで終わりです。ここまでけっこう山あり谷ありの大事業、難事業だったのに、最後はなんだかあっけなかったですね。でも、3分で料理ができたようにみえるのは、そこまでの段取り八分の仕込みがあったからこそで、人生とかくこんなものかもしれません。
あと片づけと補足
ちなみに、上の計算で、x を大きい方の黄金比とおいて、それに着目して整理しましたが、これを y、すなわち小さい方の黄金比について整理するとどうなるのでしょうか? y についても収束することになって、極限値が二つあることになるのでしょうか?この式を y について整理しても同じような格好になりますが、(A)の部分は分母分子が入れ替わります。つまり、この部分の絶対値は「1」を上回りますので、0 に向かって収束せずに、逆に発散します。従って、式全体も y に向かって収束することはなく、この比の式では、そちらのルートは行き止まり、ということになります。(A) の部分の分数のボリュームがどうなるかがカギ、ということですね。