まず、隣接三項漸化式と、前回導き出したその特性方程式は、以下のものでした。
フィボナッチ数列は、この係数が両方「1」のケースですから、その特性方程式は以下となります。
さて、ここで早くも胸がかなりドキドキしてきます。
上のこの式は、次の式と似ています(というか同じです)。
そう、これは黄金比の長い方と短い方の関係の式です。また、それを整理した以下の式、
これは、黄金比を算出した時の、解が黄金比になる二次方程式そのものです。
つまり、フィボナッチ数列の特性方程式は、「解に二つの黄金比を与える二次方程式」なのです。ここで、フィボナッチ数列と黄金比の直接的な関係が、忽然と姿を現したことになります。
胸の高鳴りを押さえながら、さらに進めましょう。前回苦労して作った隣接三項漸化式の一般項は以下のものでした。
これをフィボナッチ数列の係数をはめて整理していきます。まずは分子側から。フィボナッチ数列は初項と2番めの項が「1」ですから、
また、分母は、「特性方程式の解=黄金比」をあてて、こうなります。
よって、これを組み合わせて「フィボナッチ数列の一般項」は以下となります。
これでようやっと出ました!元の漸化式の姿からは想像を絶する複雑な式です。しかし一方で、中に二つの黄金比がそのまま入った、息をのむような整った、美しい式でもあります。まるで大粒のイチゴをまるごと奮発した上等のいちごショートケーキのような贅沢なつくりです。上の左辺の側もよく見ていただきたいのですが、この x も y も中身は黄金比そのものですから、この式は黄金比の組み合わせだけでできていることになります。まさに原材料黄金比100%の、「ピュア・ゴールド」の一般項です。
この式は、特に貴重なものとして、発表したフランスの数学者の名を記念して「ビネの公式」(Binet's formula)と呼ばれています。フィボナッチがフィボナッチ数列を著書で公表したのは1202年ですが、ビネがこの公式を発表したのは、1843年で、間を600年の歳月が経っています。