また、無限数列の極限には、収束せずに「発散」するものもありました。発散の中には、プラスの値にどこまでも増えていくものもあれば、マイナスの値をどこまでも減っていくものもあります。これを同じlim記号と、「+∞ (プラス無限大)/−∞ (マイナス無限大)」 の記号を用いて以下のように表記します。
左辺の方の読み方ですが、「リミット、n 無限大、an」 くらいが多いようです。
さて、この記号も、シグマ記号と同じで、数式の中ではやたらに出てくる記号ですね。「数列」の中では、こういう概念がたくさん出てくるので、たいへんではありますが、まとめてやっつけられると考えれば効率的でもあります。最初の式の意味は、文章で書けば「項をどこまでも増やしていくと、ある値にどこまでも近づいていく」というもので、それだけみれば簡単なので、変に尻込みする必要はありませんが、中身に分け入っていくと、こちらはシグマ記号と違って、そう手頃な話ではありません。
その理由はいくつかあります。ひとつは、シグマ記号は中身は「足し算」というこれまで馴染んでいる計算そのものでしたが、こちらはここではじめて出てきたまったく新しい考え方になります。
もうひとつは、収束するのか発散するのか微妙なケースがあることです。たとえば、ちょっとづつ増えてはいくものの増え方が減っていくようなケースでは、どこまでも先に行くとどこまでも増えるのか、それともどこかで頭打ちが来るのか、一見してよく分からない場合があります。こういう場合では、数式の操作を通じてどちらなのか判定をきっちり「詰める」必要がありますが、その土台になるのは、最終的には「どこまでも増やすとどこまでも近づいていく」とはどういうことなのかを、数学の言葉で精密に整理した定義です。
これは、それ自体がここから先の大きなテーマのひとつになる内容です。ハードルもけっこう高くて、学校の過程でいうと大学数学のレベルになります。ただ、逆に考えれば、そこまで行き着くまでの間は、上記のように文章の言葉を使った直観的な理解を頼りに、微妙なケースは個別に判じ物をしながら、この新しい考え方への感覚を深めていく、というやり方でかまわないということです。遠慮せずにこれもどんどん使い込んで、経験値を増やしていきましょう。