等比数列は同じ比で増えたり減ったりしていく数列ですから、前の項との段差もそれに応じて増減し、一定ではありませんので、等差数列のときのように「ひっくり返して足す」作戦は使えません。
ではどうするかというと、足してダメなら引いてみな、ということで、「公比をもう一回掛けて引く」というやり方をとります。
これによって一項ずれた増減で生じた最初と最後の項だけが残り、その間の項は全部相殺されて消えるので、等差数列のときと同じように、初項とおしまいの項、そして足す項の数、という明確に与えられた要素だけで和を構成できるようになります。これもとてもうまいテクニックですね。実際の計算式でみてみましょう。
等比数列の和を求めるこのやり方を、和の「S(Summation)」から公比 r を全体にもう一回掛けた「rS」を引くところから、「S−rS 法」と言ったりします。
等比級数/幾何級数の応用
ところで、この等比級数/幾何級数の和の公式ですが、たいへん重要な公式です。どのくらい重要かというと、いろいろな場面でひんぱんに出てくるので、頑張って記憶しようとする必要がないくらいです。実用の面でも、ファイナンスの金利計算や経済学で頻出しますし(これはあとでひとつ例を取り上げます)、数学に閉じた中だけでもたくさん登場します。ここではそれが基本的な数の構成にも深く関わっているところをみてみましょう。今、次の小数があるとします。
この小数は、10進法の記法に変えると以下のようになることは、以前確認しました。
上の記述から、この小数は、初項「1/10」、公比「1/10」の等比数列の和、つまり幾何級数とみることができます。そこで、さっそく先程の和の公式をあてはめると、以下のようになります。
これを計算していくと、
となって、「S−rS 法」で作った和の公式から、確かにもとの小数が再現されました。これはまだごく簡単な例ですが、これをこのまま桁を延ばしていけば「0.9999...」の問題を考える際の重要な切り口になることは当然予想されます。なんだかワクワクしてきますが、これをうまく扱うには、今はまだ道具立てがだいぶん足りていませんので、それらは順を追って今後揃えていきましょう。