とはいっても、総和ですから、各項をただ足しただけのものですし、実際の計算でも順番にただ足していけばいいだけですが、それではちょっと頼りないので、一般項のときと同じように、項の数が多いときも含めて、もっと効率よく和をたどりつける計算式を探せないか、ということです。
等差数列の場合、各項は一定の決まった差で階段状に増えていきますから、これを寄せ集めた全体を一個の物品とみると、ちょうど楽器で長さの違う笛をつなげた葦笛の「パンパイプ」の形に似ています。
これを、同じものをもうひとつ持ってきて裏返し、もとのものと組み合わせると、ちょうど段々のところが噛み合わさってきれいな長方形になります。この所要スペースは、長方形の面積の計算で簡単に求められます。これで葦笛二つ分ですから、1ケ分はその1/2です。
等差数列の和はこのような原理で求めます。うまいこと考えますね。工場の出荷配送で、物流スペースを節約するための詰め合わせのテクニックのようです。
では、これを実際の計算式でみてみましょう。等差数列の項を足したセットをもう一つ用意し、並びの前後をぐるっとひっくり返してもとのものと足しあわせます。各項の値の算出には、さっそく先にみた一般項を活用します。
すると、各項の和はすべて一定になりますから、これを項の数だけ掛けて半分にしたものが、1コ分の和です。これが等差数列の和の計算式になります。この値は、上の図からも分かるように「(初項+終項)×項数÷2」です。
いちばん最初の式と比べると、途中の「・・・」のような曖昧なところがなくなって、初項と終わりの項、そして項の数という分かっている値だけで、きっかり正確に和の値を出せるようになっているところが、大きな進歩です。
ガウスの逸話
ところで、このやり方は、18世紀から19世紀にかけて活躍した大数学者のガウスが、小学生の時に、先生から出された課題をあっと言う間に解いた、有名な逸話と同じです。先生が出したのは、1から100までを合計した数を計算しなさいという課題です。小学校ですから、先生は生徒たちがそれを頭から足していって、その計算で悪戦苦闘している間に雑用を片づけようと考えたのですが、上の方法をはたとひらめいたガウス少年が 「[(1+100)×100]÷2=5050」 とたちまち解いてしまったので、先生大弱り、という話です。
資料によると、このときガウスは10歳ほどだったそうです。さすがに将来大数学者になるような人は違いますね。ちなみに、剰余演算の合同式を考案したのもこのガウスです。