とはいえ、多くのケースでは特に面白いことは起こりません。最初に有限小数を入れてみます。有限小数はそれ自体が分数(整数の比)の書き換えですから(1割る0.5は、1を1/2で割るのと同じ)、互除法の計算にかけると、整数同士の計算をしているのと実態は変わりません。

では無限小数はどうか。まず無限小数のうち循環小数を考えます。循環小数についても、もともとは分数である数を無理やり小数で書いたような数ですから、互除法にかけるともとの分数(整数の比)に戻るだけで、有限小数と同じです(特に意味はないので例は書きません)。
要は、これらの有理数はそれ自体が分数に変換できるので、互除法で2つの整数を分数に変えたのと変わらないのです。
ならば、もう一方の無限小数である非循環小数、すなわち無理数を入れたらどうなるか。これがこの項のテーマです。
無理数は、(整数同士の比の通常の)分数には直せない無限小数、というのがもともとの定義です。であれば、上に見た話から、無理数を互除法の計算にかけるといつまでも整数の比にならず、計算が永遠に終わらない、ということになります。
このことは、互除法の兄弟分である連分数の視点でみると、無限に続く連分数ができあがることを意味します。とはいえ、それは逆からみれば、この無限に続く連分数(無限連分数)を使えば、ふつうの分数では書けない無理数も分数表記に直せるということです。連分数という切り口でみれば、有理数(整数+有限小数+循環小数)=有限連分数、無理数=無限連分数、という対応になります。

さっそくいくつか実例でみてみましょう。互除法計算機に代表的な無理数である平方根を入れてみます。

円周率 π をいれてみます。

このケースでは円周率は特に規則性はなさそうですが、√2の場合は、このままずっと「2」が続きます。小数表記では非循環でまったく不規則にみえたものが、連分数に直すと整然とした規則性が現れるところががたいへん印象的です。
無理数を互除法計算にかけるというこの方法は、「取れたて通信」というサイトから教えていただいたものですが、そちらにはいろいろな無理数を同様に連分数に変えた例が出ています。
平方根のように、連分数に規則性がみつかったということは、逆にみれば、整数だけを組み合わせた計算によって、無理数の無限小数の正確な値が、何桁であろうとどこまでも深く求められる方法がひとつ見つかった、ということでもあります。
また、無理数は無限連分数を使えば分数表記できる、ということは、整数同士の比としての(通常の)分数では表せない、という無理数のもともとの定義と矛盾しません。上記のように無限に続く連分数の分母は、それ自体が既に整数でもなければ整数の比でもない(そのため入れ子が無限に続く)ので、分母と分子の比もどうがんばっても整数同士の比にはならないからです。