【数の構成】「2進法の循環小数」を考察する

前回の検証をベースに、2進法の循環小数について、いくつかの観点から考察します。

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「5」で終わる小数と終わらない小数

計算例を眺めてまず気がつくのは、変換をかけたときに2進法でも有限小数になる少数は、10進法のときに小数点以下の末尾が「5」で終わっていることです。

2進小数の変換例


このことは、前回確認した、2進小数が有限小数になる条件から理解できます。2進法に変換したときに有限小数になる分数は、「0.5=1/2」のn乗×奇数(2の約数は分母と約分されて消えてしまう)で表されますので、小数点以下の末尾には必ず「5」が残ります。

 

逆に、変換手順の側から考えても、最終的には「0.5×2」という形で、小数部が0になって消えないといけないので、逆に2で割り込みながら遡っていくと、「0.5 → 0.25 → 0.125 → 0.0625 ...」というように、常に5を残しながら半減していきます。結局この「5」は、10進法の基数「10」を2進法の基数「2」で割ったときの5です。一方、「無限」小数の方では、「2で割る/2を掛ける」という手続きからすれば半端な「0.4」「0.8」のような小数部が続き、そのため小数部がいつまでも消えず、循環する状態となっています。

しかし、反対に末尾が5で終わる(10進法の)有限小数は必ず2進法の有限小数になるかというと、そんなことはありません。たとえば「1/20=0.05」のように、分母に2以外の約数を持つ場合も末尾が5になることがあるからです。

2進小数の変換例


まとめると、2進法に直したときに有限小数になる10進小数は、常に末尾が5で終わっているが、反対に5で終わっているからといって2進小数が必ず有限小数になるとは限らない。一方、それ以外の数字で終わっている有限少数は、2進法ではすべて循環小数/無限小数になる、ということです。末尾に5があることは、確定ではないにしても、ひとつの目印になります。


「2進分数」との関係

また、もともとの分数との対比という点からみると、変換プロセスの際の1/2で割り戻す(2を掛ける)回数が分母の2の累乗の回数(指数)と一致していること、小数部が分子を進数変換した数とちょうど一致していることも注目されます。これは、2進小数が単に基数を変換しただけで分数としての数の構成、内部構造はなにも変わるところはないという点からも明らかで、10進法のときと同じです。

2進小数と2進分数の関係

逆に、循環小数については、このようなきれいな形に分数が納まらないので、分数の割り算をすると、割り切れずに無限の繰り返しが起きる、また、小数の側からみれば無限に小数部を継ぎ足していくことで、同じ値の分子分母を無理やり再現しようとする、ということができ、これまた10進法のときと同じです。


簡単に無限小数になる2進小数

われわれは、算数ではじめて小数を習ったときから、まず有限小数から入るので、なんとなく有限小数が「ふつう」の「ありふれた」小数で、無限小数、循環小数が「珍しい」「変わった」小数のような先入観がありますが、ここまで10進法、2進法を通してみてきたことから考えると、10進法では有理数の分母が「2」「5」というきわめて限られた部品のみでできた分数だけが有限小数で、ほかの素数が混じっているものはすべて無限小数になります。

2進法ではさらにその条件が厳しく絞られて、「2」の純正品だけが条件になり、10進法では有限小数になる「5」の混じった分数も無限小数になります。つまり、組成の条件からみると、全体に無限小数の方がむしろずっとありふれていて、有限小数の方が珍しくて特殊でラッキーな小数ということです。つまり、2進法を得意としているコンピュータは、われわれが有限小数とみている多くの小数を、裏で無限小数として扱っていることになります。

また、ここから考えると、数を扱うときに、約数の多い数を基数にしておくのは案外便利かもしれない、という考えにも行き着きます。実際われわれの身の回りでも、10進法の使用を中心としながらも、「月」や「干支(えと)」の12進法や「時間」の60進法、角度の360進法のように、別の慣習も残っていますし、英語圏では、「ダース(dozen)」や「インチ・フィート(1フィート=12インチ)」のような12進法の単位も根強く生き残っています。これらはみな約数が多くて、割り切り安い基数です。いろいろ混ざっていると揃えにくいからみんな10進法に統一してしまえばいいのに、とも思いがちですが、それなりの合理性があるわけです。1年が10ヶ月だったら、「四半期」というような、ちょうど具合のいい括りも不可能ですね。

この関連で、Wikipediaをみていたら、英語圏では、同じ理由から「約数が少なくて不便な10進法をやめて、12進法を一般の公用にしよう」という「Dozenalism」という運動があるのだそうです(英語版の方にさらに詳しい説明があります)。

英米では十二進法を採用するよう主張する少数の人々がいる。人間の指の本数から派生した原始的な十進法より3分割4分割できる12進法のほうが理にかなっているとされるためである。これらの人々は英語で通常使われる duodecimal を使わず、dozenal を使う。数字は、10 を X で、11 を E で、あるいはその変形で表したり、10 を * で、11 を # で表したりする。(十二進法 - Wikipedia)

リンク先をみると、ホームページがあってほんとうにそういう活動を熱心にしているようです。広まるかどうかは別にして、考え方としてとても面白いと思います。


posted by oto-suu 11/07/16 | TrackBack(0) | 数の構成 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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