【対数】対数はなんの役に立つのか

ここまでもところどころで触れてきましたが、対数がなんの目的で作られ、どう役に立つのか、その意義について、ここでまとめておきましょう。

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小さな数で大きな数を扱える

対数を扱う意義のひとつは、小さな数で大きな数を扱えるということです。指数をもとの数の代理人にたてて扱う対数は、きわめて巨大な数でも、扱いやすいはるかに小ぶりな数でシミュレートすることができ、また小数の指数で細かく小刻みに制御することで、それを精密に行うことができます。これは、逆に1の反対側(マイナスの指数)で桁を深く掘り込んだきわめて小さな小数についても同じです。これによって対数は、テコの原理のように、あるいはプロジェクターやプラネタリウムの映写の原理のように、手元の手頃な数を使って、マクロやミクロの世界の、巨大あるいは極小の数の現象を自由に操作することができます。

対数の意義

さらに、それらの、きわめて巨大な数や、きわめて微細な数も、扱いやすい数に呼び込めるということは、それらを同じレベルの数として、同列に扱えるということです。そのため、もとのままでは、文字通りあまりに桁外れでイメージしにくい数の規模感が逆に感覚的にもつかみやすくなります。

対数のこの考え方は、多くの単位にも採用されています。代表的なものが地震のマグニチュードです。地震のエネルギー規模を示す単位のマグニチュードは、単位数が1上がった時に、自然数分ではなく、約30倍上がり、きわめて巨大な地震であることを示す、という話は聞かれた方も多いと思います。これはマグニチュードが対数で刻まれた単位だからです。同じように対数をベースにした単位に、溶液のイオン分子数で酸性度を測るpH(ピーエイチ/ペーハー)や、星の明るさを示す等級があります。また、実はわれわれの生理的な感覚も、この対数的な規模感にそのまま添っているところがあり(「フェヒナーの法則」)、そのため音量の大きさを示すdB(デシベル)の単位も、対数をベースにして定義されています。


足し算引き算で掛け算割り算ができる

対数のもう一つの大きな効能は、その本体が指数であるため、指数法則に基づいて、加減の演算で乗除の計算ができることです。現代のわれわれでも、暗算で計算するときには、足し算引き算であれば、5ケタ6ケタくらいなら少し訓練すればわりと簡単にどうにかなりますが、掛け算割り算になると、2ケタになっただけで相当難度があがります。ですので、対数のこの特徴は、電卓や計算機のなかった昔の時代には、ひとつめの利点とあわせてたいへん大きな利便性がありました。ここのところの事情を、有名な数学者でテレビタレントの東海大学の秋山仁教授が、新聞の連載で以前取り上げていました(「【秋山仁のこんなところにも数学が】天文学者の寿命を2倍にした対数」産経 2009/5/3)。対数の考案者であるイギリスの数学者ネイピアが、当時発達しはじめた遠洋航海や天文学における実用上の必要を背景に、ケプラーやチコ・ブラーエといった科学史上のビッグ・ネームとのかかわりの中で、最初の対数表を作り出していく過程が、短い文章の中で活き活きと描かれています。

対数の利点は、極めてケタ数の大きい数の面倒なかけ算や割り算を、易しい足し算や引き算に直してくれることにあります。(略)コンピューターの普及によって、現在では対数は数値計算にあまり用いられませんが、その発明当時は、現在のコンピューターの発明に匹敵するような大事件でした。ケプラーは、対数の発明は天文学者の寿命を2倍にした、とまで言っています。この大発明は、スコットランドの裕福な貴族、ネーピア個人によってなされました。当時はいわゆる大航海時代で、ヨーロッパの人々は世界各地に進出していました。そのための航海術にはサインやコサインの三角法が必須で、三角法も有効数字が10ケタ以上もある精密なものが作られていましたが、その計算、特にかけ算と割り算が困難を極めたのです。たまたま1590年に、ネーピアの友人がある事情でデンマークに行き、チコ・ブラーエの天文台を見ました。そこで三角法の式を利用して積を和に直す方法が使われていることを知り、ネーピアに伝えたところ、彼はこの話に刺激されて対数の研究を始めたそうです。20年の努力の末、1614年に0度から90度まで1/2度刻みの角に対するサインの値の“対数表”とその使用方法を本にまとめて発表しました。

この、「対数の発明が天文学者の寿命を2倍にした」というフレーズは、対数の効用を説明する際には必ず取り上げられる表現です。同じく対数の意義を解説した「ありがとう対数」というページでは、計算だけのために一生をぜんぶ使いはたしてしまった学者さえいたと書かれています。もしかしたら、対数が成し遂げた効率化は2倍どころの話ではなかったのかもしれません。

ネイピアが対数を取り上げた最初の著作の表題は「驚くべき対数法則の記述」というものだったそうです。タイトルをみただけで、当時の興奮ぶりが伝わってくる感じがしますね。




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posted by oto-suu 11/03/26 | TrackBack(0) | 対数 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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