このため、慣れてくると、常用対数の値を見ただけで、真数の規模がどのくらいのものなかのか、だいたいあたりがつくようになります。
またこのことは、対数においては、(おおざっぱにいえば)わずか"1"の幅の小さな範囲の中に、真数のレベルのその桁に属するすべての数が対応しているということでもあります。みてきたように、対数に変えると元の数よりずっとコンパクトになりますが、箱庭に並べられたミニチュアの模型のように、その中にいろいろな数が、小さく折りたたまれて詰まっているのです。
また、対数のこの性質は、真数のどの桁についても等しく同じようにあてはまります。これは裏を返せば、対数という「数のミニチュア」の縮尺あるいは縮小度は、桁が大きくなるほど著しく大きくなるということです。なぜなら、たとえば2桁の数は、10から100までの90のバンド(幅)しかありませんが、4桁の数は9,000、その上はさらに90,000、900,000といくらでも大きくなっていくからです。対数はそのどの桁もすべて平等に1の範囲の間の小数で賄(まかな)います。10桁だろうが32桁だろうが同じです。従って桁数があがっていくと、それに対応する対数は、きわめて小さな範囲の中に、大きさの面でも物量の面でもきわめて巨大な数が押し合いへし合いの状態になります。また逆にいえば、小さな数で大きな数を代理して操作する対数の「テコの効果」は、そこではきわめて大きなものになります。
これが対数のひとつの大きな特徴です。
そして、これはもちろん、対数に飛び飛びの整数だけでなく、小数(分数)、すなわち"1の間の数"を設定したことによってはじめて得られた効果です。