これは、ある値が等しいときに、それを同じ底に対する真数としてはめ込んだ対数の式も等しくなる、という意味です。累乗される基数の底と、その結果である真数がともに等しければ、両者を橋渡しする「対数=指数」は一つに定まりますから、対数で間をとった両辺は等しく、これは正当な移行です。
このように、ある数式の両辺の値を真数としてはめ込んで対数化し、真数に対応する対数の式として扱うようにすることを「対数をとる」あるいは「両辺の対数をとる」といいます。対数計算の中では常用されるテクニックで、ひんぱんに出てくる用語のひとつです。
上記の証明でも、こうして「対数をとる」ことで、そこから先で対数公式を適用できるようになり、元とは異なる別の底に対する関係が証明できるという流れになっています。幾何の証明における「補助線」のように、対数化することは、この証明にとっては決定的な転換点です。
最初にも少し触れましたが、もともと対数の使途は、元の数の計算が困難な時に、それを対数=指数の計算で置き換えて、計算を簡単にしたいという点にありました。従って、ふつう一般の数式を対数という異世界にいきなり引き込んで搦(から)めとるこのわざは、対数の考え方にとって本質的なものを含んでいます。