図形を構成するすべての辺の大きさが等しい時に、形と大きさがともに等しく合同になるということは、他の多角形ではただちに自明ではありません。たとえば四角形では、四辺の大きさが同じでも下図のようにまったく異なる形状になることはいくらでもありえます。
三角形では、辺の大きさが揃っているだけで、形状も含めて一致することは以下の証明で確認できます。
- 三辺が等しい二つの三角形を底辺で背中合わせに貼り合わせ、向かい合う頂点同士を線分で結ぶ
- すると上図のように二つの二等辺三角形ができるが、この二つの二等辺三角形の底角はそれぞれ等しいため、それを足し合わせた向かい合う頂角同士も互いに等しい
- よって、貼り合わせた二つのもとの三角形は、二辺と夾角が等しいため合同である
上記の証明では、辺の等しさだけから「角度」という形状の等しさを引き出すのに、別の合同条件から導いた二等辺三角形の底角の性質を利用しています。二等辺三角形は両辺の長さが等しいという性質だけで定義された図形ですので、そこに底角が等しいという角度に関する性質が確認されたことで、辺の等しさを形状の比較へと変換する切り口としているわけです。
ところで、三角形の場合、このように辺の長さを決めてそれを組み合わせるだけで、形までも一意に決まってしまうということは、三角形がひしゃげない形であるということを意味するものだといえます。同じ辺から構成しても四角形が上のように任意の形態をとりうることは、実際の構造物を作った時にそれだけでは容易にひしゃげてしまう、力学的に弱い形であるということです。それに比べて三角形を用いた場合には、いったん所定の辺長の部材を組み合わせてしまえば他の形状をとりようがないため、素材自体の強度が耐えられる限界までもちこたえます。三角形のこの力学的な強さは、建物の耐震補強の筋交いや鉄橋の橋げたなど、身の回りのいたるところに活用例が見られますが、それを大もとのところで支えているのが、辺を組み合わせるだけで形状までもが一意に固定されてしまう、三角形のこの特殊な数学的性質だと考えられます。






















