「平行線公理」
この「平行線の同位角は等しい」という性質は、体系的な幾何学の出発点である「ユークリッドの原論」(Stoicheia )では5つの公準(公理:axiom)のうちのひとつにあげられています。「公準」とは、他のすべての証明の根拠となるが、自身は証明が不要な根本的な約束ごとのことです。ちなみに、この5公準の各項目は以下のとおりです。
- 点と点を直線で結ぶ事ができる
- 線分を延長して直線にできる
- 一点を中心にして任意の半径の円を描く事ができる
- 全ての直角は等しい
- 直線が 2 直線に交わり、同じ側の内角の和を2直角より小さくするならば、この2直線は限りなく延長されると、2直角より小さい角のある側において交わる
見てのように、このうち同位角に関する5番目のものだけが、ずいぶん回りくどい、慎重な表現になっています。そのため、この五項めは「平行線公理」と呼ばれて、これが本当に公理にあたるのか(証明が不要なのか)という論争がえんえんと続いてきたそうです。その結果、この項目を外しても、(われわれの日常的な直観には反しますが)ユークリッド幾何学とは別の、整合的な理論が作れるということが最終的に確認され、それがいわゆる「非ユークリッド幾何学」の出発点になったといわれます。非ユークリッド幾何学が生まれたのは19世紀で、「原論」がまとめられたのは、紀元前300年頃ですから、2000年にわたってモヤモヤしていたわけで、いろいろな意味で驚きです。
この同位角の問題は、そのくらい幾何学全体にとっても奥の深い、いわくつきのものですが、逆に考えれば、そのような高度な段階にいくまでの間は、日常レベルの直観に従って、証明不要の基本性質として扱ってかまわないということです。ここではそのことを確認したうえで先に進んでいくことにします。




















